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第12回「ALL」が育む未来価値 (コモンズ投信 渋澤健)

 さて、クイズです。設立からおよそ120年の長寿大企業でCEOが9人しか交代していない会社はどこかわかりますか。例えば、大手総合商社の場合6年で交替というパターンが一般的ですから、120年では20人ぐらいの計算になります。銀行はもっと短い(人数が多い)かもしれません。それでは、メーカー?
 
 はい、答えはメーカーです。でも、実は日本企業ではありません。米国のGE社です。一般的な米国企業のイメージと異なり、その9人の全員が「生え抜き」経営トップです。1896年に米国ダウ・ジョーンズ株式指数(当時は12銘柄)が開始されたときに組み込まれた企業で、現在でも残っているのはGEだけです。
 
 長い年月で事業環境が変わっても、常に「社会的ニーズに応える」同社の姿勢によって、GEは進化し続けてトップポジションをキープしてきました。電球製造や電力発電を起源とするGEですが、現在はジェット機エンジン、ヘルスケア、再生エネルギーなど、まさに時代と共に「生き方」を変えています。
 
 日本でも時代の荒波を超えてきた企業は存在しています。「コモンズ30ファンド」の設立理念は、そのように進化する日本企業に長期的な視野で厳選投資し、対話を通じて持続的な価値創造の促進に貢献することです。GEは日本企業の進化にとっても、コモンズの投資にとっても、大変参考になる存在です。
 
 経済同友会の活動を通じてお知り合いの日本GE株式会社代表取締役、GEキャピタル社長兼CEOの安渕聖司さんが、私が主催する「論語と算盤」経営塾の塾生としてご一緒した最中に『GE 世界基準の仕事術』という著書を出版されました。素晴らしい内容の本だったので、これは多くの方に知ってほしいと思い、安渕さんをセミナーの講師として7月下旬にお迎えしました。
 
 GEは時代や社会の変化に応じて単純に新しい事業部門を増やし続けている訳ではないということがわかりました。例えば、宇宙飛行士のヘルメットなどイノベーションでリードしていたプラスチック部門は売却し、閉鎖するという容赦ない選択と集中で事業展開しています。現在のCEOのジェフ・イメルト氏はプラスチック部門で実績を挙げてきて組織のトップの座を得ていますので、GEは個別部門ではなく、“全体最適”の徹底を優先する企業文化が浮かび上がってきます。
 
 また、事業部門の売却など大型案件を決定するのは当然ながら取締役会ですが、現在のGEの17名の取締役のうち、社外取締役が16名を占め、唯一の社内取締役はイメルト氏です。たった一人の社外取締役を入れるだけでも抵抗する日本企業は、「社外取締役制度は意思決定の弊害になる」とか、「企業業績につながらない」と反論します。ホントでしょうか。社外取締役を「お客さま」や「お飾り物」としか思っていない、中途半端な制度やマインドセットで導入していることが主な原因だと思います。
 
 安渕さんのお話を伺いながら特に感銘を受けたのは、GEのダイナミックな経営の土台となる人材の評価と育成です。例えば、人事評価は業績という定量的要素と5つの“Growth Value”という定性的要素で決まります。
 
 “Growth Value” は、GEリーダーに必要な特性のコアであり、5つの要素があります。『外部志向』:幅広いステークホルダーとの連携や、世界の課題に関心を持つ。『明確でわかりやすい思考』:曖昧や不確実性を受け入れ、適応力とコミュニケーション力がある。『想像力と勇気』:リスクを取ることを奨励するとともに、成功と失敗から学ぶ。『包容力』:他の意見に耳を傾け、謙虚である。そして、『専門性』:常に自分をレベルアップさせるとともに、他者の育成にも熱心であることです。
 
 縦軸が業績で、横軸をGrowth Valueというマトリクスで評価した場合、右上のポジションが「ベスト」な状態になり、左下が「ミスマッチ」(つまり、解雇ということ)です。一方、業績が高くてGrowth Valueが中の場合、そして、業績が中でもGrowth Valueが高い場合でも評価は「優秀」になります。ただ、業績が高くても、Growth Valueが低い左上の場合は「要改善」という評価になります。GEでは予算達成という「結果が全て」ではなく、その「プロセス」が重視されていることがわかります。結果は短期的な要素かもしれませんが、プロセスが常に高い水準で推移すれば、持続的に良い結果が見込められます。
 
 なかなか正確に数値化できる要素ではありませんが、これがGEの最も大切な非財務的な「見えない価値」ではないでしょうか。企業の持続的な価値創造、進化の可能性は財務諸表で数値化できる「見える価値」ではなく、この「見えない価値」に潜んでいます。
 
 一般的なリーダーのコンセプトは「オンリーワン」です。前CEOのジャック・ウェルチ氏も後継者であるジェフ・イメルト氏もパワフルな存在で、そのようなイメージがあります。ところが、安渕さんによるとGEのリーダーのコンセプトは「オンリーワン」ではなく、「ALL」だそうです。まさに、GEの「見えない価値」です。
 
 コモンズが投資している企業の多くも「○○バリュー」、「□□ウェイ」など、企業価値創造の指針を設けています。持続的な価値創造が期待できる企業に普遍的な特性は、自身の「見えない価値」をしっかりと意識していることです。これは、未来とは「誰か」にやってもらうのではなく、「一人ひとりが共に育む」という、いわば「ALL」というコンセプトです。「一人ひとりが共に育む」――私たちの長期投資にも通じるものがありますね。
 

コモンズ投信 渋澤健


 
「運用のプロが教える草食系投資」
渋澤健(著) 中野晴啓(著) 藤野英人(著)
価格: ¥1,620
出版社: 日本経済新聞出版社 (2010/4/24)
単行本(ソフトカバー): 200ページ
 


「30歳からはじめる お金の育て方入門-貯めながら殖やす新しい習慣-」
渋澤健(著) 中野晴啓(著) 藤野英人(著)
価格 : ¥1,512
出版社: 同文館出版 (2013/2/13)
単行本(ソフトカバー): 224ページ


 

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